2002/05/11     駈け込み事件について                                    前頁に戻る

 

         

    この事件だけど、最初に駈け込みのビデオを見た時、えらくタイミング良く撮影できたものだと少々訝しく感じたものだ。それにあのNHKが特別に30分も時間を割(さ)いて力を入れて報道していた。何となく「やらせ臭い」なと直感したのだ。それでネットで調べて見ると案の定、ちゃんと納得の行く情報が掲載されていた。ちょっと長いが引用しておく。

    (転載開始)

    産経新聞5月9日

    中国・瀋陽市の日本総領事館で八日、中国公安当局に拘束、連行された北朝鮮住民の「駆け込み亡命」未遂は、韓国の非政府機関(NGO)の支援で計画された。事前にこの計画を知った日本の関係者が、近く瀋陽市で公館への「駆け込み」があると日米外交当局に通告していたが、日本側は十分な対応策をとっていなかったようだ。

    今回の「駆け込み亡命」を計画、支援したのは韓国のNGO「チャン・ギルス家族救出運動本部」「拉致脱北者、人権と救命のための市民連帯」などだが、このグループが聯合ニュースに事前に情報を流し、韓国NGOの日本側協力者が日本の共同通信に連絡、日韓のカメラが現場で待機していた。

    関係者によると、「駆け込み」の本命は瀋陽の米総領事館だった。だが、同館は八日、門が閉じていて塀が高く、女性子供が塀を乗り越えることは無理だったため、門が少し開いていた隣接の日本総領事館に女性子供を含む五人を駆け込ませることにした。この次善策はあらかじめ検討されていたため、日本の協力者によって日本の外交当局にも「駆け込み」情報は提供されていたという。

    駆け込んだ人たちは昨年六月、北京の国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に助けを求めた後、韓国に亡命したチャン・ギルスさんの家族。チャンさん一行は日本のNGO「救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク」(RENK)が支援し、UNHCRに駆け込み、難民申請をした。韓国亡命後は同国のNGOと活動しており、今回は韓国のNGOが、家族を呼び寄せるため計画した。中朝国境では、こうした脱出者の保護や第三国への亡命の手助けを行う日本、韓国のNGOが数多く活動中でNGO間の情報交換もあり、今回の計画を知った日本の関係者が日米当局への通報を行ったという。

    「駆け込み」の背景には脱出者の中国での生活支援や第三国への脱出費捻出(ねんしゅつ)などで相当の出費を迫られるNGOの経済事情がある。RENKで活動を主導している李英和・関西大学助教授は、「彼らを救うには在外公館への駆け込みという非常手段を取るしかなくなってきている。今回の駆け込みも、脱出支援に熱心な日本なら何とかしてくれるのではとの見込みからだろう」と話す。

    在中国の外国公館への「駆け込み」は急増、恒常化の傾向にあり、今春からスペイン大使館、ドイツ大使館、米国大使館、韓国大使館などがその対象となった。複数のNGOが支援したものだが、北の脱出者への支援は現在のところ民間しか行っていないため、「事件」は続きそうだ。中国に潜伏・逃亡生活中の北朝鮮の脱出者は十五万人以上とされるが、家族を北に残し越境を繰り返す人が多いこともあって国際的には難民認定されていない。

    (転載終了)

    なるほど、それで合点がいった。タイミング良くビデオ撮影ができたわけだ。事前に日米の領事館や報道機関に駈け込み情報は漏れていたわけで、もちろん中国側もこの情報はキャッチしていたはずだ。中国政府としては国の威信があるわけで、国内で外国人に勝手な真似はされたくない。たぶん駈け込み絶対阻止の命令が中国官憲には出されていたのではないか。その結果が日本領事館内まで侵入して亡命者を拘束したということだろう。中国官憲も必死だったのだろう。命令の遂行違反は銃殺だろうからね。それにしても領事館内は日本の主権の及ぶところ。白昼堂々と、日本の国家主権を中国官憲が蹂躙したことについて中国政府は正式に謝罪すべきである。でなければ日本の国家としてのけじめがつかないだろう。それにつけても日本の領事館員の事なかれ主義的対応には情けないの一語に尽きる。事前に駈け込み情報を入手していながら何故もっと毅然とした態度が取れないのか。これは外務省の役人に最悪の場合を想定した危機管理の意識がまるでないことの証左である。

    ところでこう言った複雑な背景をNHKは一切放送しなかった。ただビデオ映像を見せつけ、中国官憲の横暴と日本の役人のふがいない対応ぶりが報道されるばかりだった。このような報道を見せつけられれば、日本国民に「中国になめられている」と反中国感情が沸き起こるのは自然の成り行きだろう。いつも若い女の尻ばかり追いかけて政治に全く無関心な享楽主義者の喜多氏でさえ、掲示板に「中国憎し」と憤懣をぶつけるほどだからね。しかしこの事件で日本中に反中国感情が沸き起こることで一番喜ぶのは中国を最大の仮想敵国としているアメリカ政府(ブッシュ一派)だろう。そして有事立法をゴリ押しする日米の軍関係者でもあるだろう。この駈け込みのシナリオを描いたNGOだが、なんとなく胡散臭い感じがしないか。バックにCIAの影が見え隠れしているのではないだろうか。中国政府もうまく嵌(は)められたと自身の不手際に今では後悔しているのではないだろうか。