2002/03/22  副島隆彦及び陰謀論について                                 前頁に戻る

 

         

    早稲田の後輩で政治思想を探求するのが好きな男がいて、彼にこの掲示板でも紹介した副島隆彦のサイトを紹介したら、以下のような感想メールが届いた。それに対して私も返信メールを出しておいた。面白い話題なので奇兵隊の諸君にもその内容を公開しておく。 

    ●白石先輩へ

    毎度!猪塚です。先日、紹介してもらいました。副島隆彦氏のHPをひらき、早速、一通り、目を通しました。有料会員になろうかとも、検討中です。確かに鋭い洞察力、抜群の英語力により、アッと驚くような指摘ばかりです。  しかしながら、何かしら抵抗感があり、心酔にはいたっておりません。小室先生の直弟子であっても、なにかひっかかります。そのようななかで、本日の日経におもしろい記事がありましたので抜粋します。

     QUATE

     "陰謀史観が蔓延する国の行方”

    識者を自任するのであれば、駆使してはならない、反則技がある。それは、”陰謀史観”だ。”世の中が悪いのは誰々のせい。”と言い募り”その悪人さえいなくなれば世の中は良くなる。”という論法。分かりやすいし勧善懲悪で人々に強く、訴える効果的な手法だ。この陰謀史観の前には現状分析など跡形もなく吹っ飛ぶ。憎悪を人々の心に植え付け世の中の複雑さを無視して悪人さえ成敗すれば素晴らしい明日が来ると思い込ませる。政策論というものはそういう、陰謀史観を克服する努力によって発展してきたのだがいつの世であっても陰謀史観の魔力は人々の心を惑わすものらしい。結果的に陰謀史観へとたどり着いた識者ならその仮説が真実であることを立証するために努力すべきだ。一握りの人々がこの世を思うがままにコントロールしているという、俗説が真実なのだと、いうことを、事実の列挙によって証明しなければならない。その努力があってこそ、近代科学を標榜することができる。それができないのなら、天の怒りを鎮めるために乙女の生贄をささげた、太古の原始宗教と変わるまい。ところが、わが国ではこの手の陰謀史観が大流行。識者の皮を被った俗物がうす八百を垂れ流している。不良債権処理を怠り続けた結果回りまわって経済や、金融が悪化している、責任を誰かになすりつけるため、生贄を探している。まるで魔女狩りだ。

    UNQUATE

    陰謀史観の手口は横溝正史の手法と似てませんか?
    白石先輩にも、この手の気味が伺われますが。。。。。。
    あと、3-5冊ほど副島氏の本を購入の上、講釈を述べさせていただきます。

    ●白石から猪塚君へ

    > 毎度!猪塚です。先日、紹介してもらいました。副島隆彦氏のHPをひらき、
    > 早速、 一通り、目を通しました。有料会員になろうかとも、検討中です。
    > 確かに鋭い洞察力、抜群の英語力により、アッと驚くような指摘ばかりです。
    > しかしながら、何かしら抵抗感があり、心酔にはいたっておりません。

     私は参考までに副島隆彦を紹介したまでです。こういうものの見方もあることを知っていただければと思ったまでです。小室直樹がこの20年間、ディルケームのアノミー理論以外はずーっと、マックス・ウエーバーの理論だけを、使いつづけて来たのに私は辟易しています。ちっとも進歩が感じられないからです。副島はそれを乗り越える努力を地道にしていると思います。その点で私は副島を買っているのです。私は別に副島教の信者でも崇拝者でもありません。宗教とは違って、真理の探求は個人が一生をかけて納得の行く解釈を探る作業だと考えるからです。  私は副島をその真理探求の手掛りの一つと考えているに過ぎません。ですから有料会員にもなっていません。彼の著作は経済もの、アメリカ政治ものなど10冊程度読みました。それで彼の大まかな思考の方式を知る事ができました。彼の思想は固定的なものでなくは明らかに流動的です。小室のように原理、原則一辺倒ではないのですね。彼は以前の自分が間違っていると感じたら素直に自己反省して訂正することに吝(やぶさ)かではありません。私は彼のその態度に好感を持っています。副島がアメリカの支配勢力を明確に日本の「敵」と位置付け、その敵を知るために現代アメリカの政治思想と知識人の研究に没頭し、その成果を「世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち」という著作に表わしたことは画期的な業績だと考えます。この著作以前にはわれわれ日本人はあまりにアメリカについて無知でした。いや無知にさせられていたというべきでしょう。この著作は「敵はこんな事を考えているぞ」と教えてくれる兵法書のような役割があると思います。一番重要なアメリカ研究が意図的に最もおろそかにされている日本の現実に気づいた副島の慧眼とひたむきな努力には同じ日本人として頭が下がる思いがします。

    しかし先にも述べたように、私は彼の信者ではありませんので、納得の行かない彼の見解に対してはまったく同意する気はありません。たとえば彼の「今日のぼやき(197)-2001.9.20」にあるような9/11対する見解には否定的です。また彼の「属国日本論」にある幕末から明治にかけての歴史解釈にも疑問を持っています。要するに私にとって副島は真理探求の為の優秀な材料を与えてくれる素材屋さんといった所です。あくまでその素材を吟味して真理を探る主体は私自身なのです。その意味で副島のサイトは私にとっては貴重な素材の宝庫だと思っています。   「ぼやき」だけではなく、他の「重たい気持ちで書く掲示板」や「アメリカ政治情報メモ(アメ政)」といったコンテンツの類も貴重な情報源として役だっています。

    > QUATE

    > "陰謀史観が蔓延する国の行方”
    > 識者を自任するのであれば、駆使してはならない、反則技がある。
    > それは、”陰謀史観”だ。”世の中が悪いのは誰々のせい。”と言い募り
    > ”その悪人さえいなくなれば世の中は良くなる。”という論法。
    > 分かりやすいし勧善懲悪で人々に強く、訴える効果的な手法だ。
    > この陰謀史観の前には現状分析など跡形もなく吹っ飛ぶ。憎悪を
    > 人々の心に植え付け世の中の複雑さを無視して悪人さえ成敗すれば
    > 素晴らしい明日が来ると思い込ませる。政策論というものは
    > そういう、陰謀史観を克服する努力によって発展してきたのだが
    > いつの世であっても陰謀史観の魔力は人々の心を
    > 惑わすものらしい。結果的に陰謀史観へとたどり着いた識者なら
    > その仮説が真実であることを立証するために努力すべきだ。
    > 一握りの人々がこの世を思うがままにコントロールしているという、
    > 俗説が真実なのだと、いうことを、事実の列挙によって
    > 証明しなければならない。その努力があってこそ、近代科学を標榜する
    > ことができる。それができないのなら、天の怒りを鎮めるために
    > 乙女の生贄をささげた、太古の原始宗教と変わるまい。ところが、わが国では
    > この手の陰謀史観が大流行。識者の皮を被った俗物がうそ八百を垂れ流してい る。
    > 不良債権処理を怠り続けた結果回りまわって経済や、金融が悪化している、
    > 責任を誰かになすりつけるため、生贄を探している。
    > まるで魔女狩りだ。

    > UNQUATE

    日経の記者の書いた文章なのか、日経に連なる御用学者が書いた文章なのか判然としないが、この手の文章を得意そうに書いて知識人ぶる馬鹿が日本にはあまりに多い。自分では陰謀論の外側にいて客観的にものを言っているつもりなのだろうが、この文章自体からして論理的に矛盾があることを全く自覚していない。そのことに猪塚君は気付いていないのだろうか。この作者は冒頭で”陰謀史観”は邪道(反則技)だから使っては行けないと無碍に否定しているのである。そのくせ中段では”陰謀史観”の仮説は事実の列挙によって証明されなければならないなどと陰謀論にもまだ分があるよう な書き方をしているのだ。冒頭で否定したのならなぜ陰謀論を否定した理由を徹底的に明らかにしないのか。その理由を明らかにすることも出来ないくせに、陰謀論が科学的に証明されていないから懐疑的だという程度の異議申立てをすることでうやむやにしている。その程度の知識しかないのなら冒頭で反則技だなどと断定的に書いてはいけないのである。この作者こそ最初に自分が断定した結論について、それが「真実であることを立証するための努力」を全く怠っているのである。自分でもよく分からない事をあたかも何でも知っているような振りをして平気で得意げに文章にして、それも自己矛盾する内容に陥っていながら、最後は「うそ八百を垂れ流」すなどとまたまた強い断定口調に戻り陰謀論を否定しているのだ。こういう輩を無知蒙昧の恥知らずというのである。これを書いた人は陰謀論について真剣に研究したことのない人間だろう。最初から陰謀論はゴミと決めつけて検証などさらさらするつもりはないのである。これを書いた人間は多分権力のピラミッドの下のほうで、権力におべっかを使いながら「おまんま」を食べさせてもらっている人間だろう。その立場上よく知りもしない事をしたり顔で平気で書いて、大衆を煙にまき、それで生活の糧を得ているのだ。要は生活の必要から書いているに過ぎないのだが、それが結果的に一般国民の目を曇らせ無知に導く役割を担っているのだからその罪は甚(はなは)だ重い。

    政治が陰謀で成り立っているのは常識だ。とくに西欧の政治は陰謀そのものではないか。地政学はその陰謀の最たるものだ。政策とはその陰謀の具体的な内容なのである。これは太古の昔からの人類の歴史に見られる不変の真理なのだ。その時代で最も力のあるものが権力を維持するために陰謀をめぐらす。二番手がその権力をかっさらうためにさらに陰謀をめぐらす。これが政治闘争であり国家間の闘争なのだ。万人至福の政策論などありもしない幻想に過ぎない。陰謀論を科学的に証明しろと言うに至っては具の骨頂もはなはだしい。陰謀が科学的に明らかにされたら陰謀の陰謀たる所以がないではないか。馬鹿もやすみやすみに言ってくれ。陰謀論で大切なのは陰謀の主体たるものは誰なのかということだ。今時、ユダヤ陰謀論やフリーメーソンの陰謀論では子供も振り向いてくれないだろう。現代の世界の覇権は誰にあるのか。これは国家などという抽象的な概念にはない。あくまで生身の人間達にあるのだ。その人間達が誰なのか、それが解れば陰謀もおぼろげながら見えてくるのではないか。今は21世紀などと嘯(うそぶ)いてみたところで人間社会の実態は戦国時代と変わらないのだ。

    前述の副島隆彦も、その著作「堕ちよ!日本経済」で陰謀論に言及して以下のように述べている。

    (転載開始)

    これは「ユダヤ陰謀論」どうのこうのという話ではない。デビッド・ロックフェラーは、80歳の高齢で、矍鑠(かくしゃく)として「アメリカの政・財・界の鉄のトライアングルを押さえている。他の連中はみんな彼の雇われだ。だから、今度のブッシュの息子も、彼の雇われである。アメリカのメディア(大新聞、テレビ、言論誌)も、このデビッド・ロックフェラーの名前だけは、滅多に書かない。怖いのである。こんな簡単な話を、どうして日本の報道陣も、学者も、評論家も書かないのか。おそらく、そういう人々も皆、彼の雇われだからだろう。大きな意味では、向こうの世話になってきたからであろう。アメリカの大学や研究所に入れてもらったり、外務省の推薦で奨学金を貰ったりしたからだろう。私達日本国民を、戦後55年間、こんなにも、上手に「強制的な上からの民主化」と称して「文明的外科手術」にかけて、「平和を愛する、民主国家の立派な国民」に育て上げるべく、指導・教育・管理してきたのだ。

    (中略)

    ロックフェラー家は明らかにユダヤ系である。こういう事実に対して、怯えて、 恐れて書かなかったり、知らない振りをすること自体がおかしいのである。わずかでも「ユダヤ系の人々」という言葉を使うと、すぐに陰謀論者扱いして忌避する。その割には、人のことを陰謀論者のように見なす人々ほど、それらの本をひそかに熱心に読んでいる。日本の言論人、学者たちは、小心者の上品ぶった怯え根性の、文明の周辺属国特有のインテリの精神構造をしている。私は、政治思想分析から入った人間であるから、いいかげんな俗説や、くだらない質の悪いレベルの、ユダヤ陰謀論の類などに動じることは一切ない。および、人をユダヤ陰謀論者として嘲笑することで知識人ぶっている人々がいるが、その人々自身が自分の知性の程度を、周りから検証された方がいい。

    (転載終了)

    私に言わせれば日経は、ウオール街の国際金融財閥の日本におけるプロパガンダの代表だ。したがってこの作者も彼らの意向を受けて周辺属国日本の阿呆インテリを煙に巻く宣伝工作をしているとしか見えないのだ。