1999/01/01  中小、自営は虫けらなのか                                               前ページに戻る


 
銀行の貸し渋りの犠牲者として中小企業の経営者や自営業者の自殺者が後をたたない。
さらにまったく馬鹿げた話だが、金が回らず黒字で倒産する零細業者が続出しているという。
貸し渋りの元凶である銀行は経営破綻の尻拭いを国民に負わせ、中小自営を犠牲にして
自己の延命を図るばかりだ。社会責任なぞこれっぽっちもない恥知らずな極悪人どもだ。
これが社会の実相である。弱いものにすべてのしわ寄せが来て淘汰されようとしているのだ。

一零細企業の経営者として正直にいえば、われわれは虫けら同然の扱いを受けている。
こんな割の合わない仕事はない。会社を守り存続させて行くために、日夜金策に走り回り、
債権者に追われ、金融業者に罵倒され、帰れば従業員に突き上げられる。まったく気の
休まる暇もない。これでは苦行僧以外のなにものでもない。こんなはずではなかったのに
と思って見てもすでに後戻りはできず、前方に口を開ける奈落の底に呆然とするばかりだ。
そこには身も凍る厳しい自己責任の世界があり、転落すれば死ぬまで借金に追われ続ける
地獄が待っている。

自己責任という言葉は中小自営業者のために適用される言葉である。大銀行や大企業の
経営者には自己責任などという言葉はどこにもない。彼らは政府によって保護され援助さ
れる。大チョンボをやらかしたものが最も優遇され、国民の血税を食んでのうのうと生きて
行けるのだ。それに引き換え、わらわれ中小自営はわずかな資金の手当てがつかないば
かりに破産し消滅していかなければならない。こんな不平等があっていいいものだろうか。
日本国憲法の法の前の平等はインチキな絵空事だ。巨大な金と権力を握ったものは何でも
ありで、何でも許される。それは絶対君主時代の君主の自己無責任とまったく同等である。

税金の話をしよう。われわれ中小自営は身を擦り減らしてやっとこさ利益を上げても税金
でごっそり持って行かれる。そして持っていかれるばかりで何の見返りもないのが実状だ。
これが大企業なら政治献金と官僚接待で持っていかれた分の倍は取り戻しているのである。
コネも資金もない中小自営はただただ税金を払い続けるために必死で働き、搾り取られる
のみである。その汗と涙の血税が銀行やゼネコンの不良債権の補填に充てられ永久に戻
ってこないのである。そして馬鹿げたことに補填に充てられた分、われわれの享受すべき
年金や福祉予算が大幅に削られていくのである。

中小自営業者の宿命とは何か。それは自ら存立できる特別な技術や特許を持たない限り
永遠に大企業の奴隷から抜け出せないと言うことだ。誰でもどこでもできる技術に安住して
いては、大企業の無理難題に耐え靴をなめてでも仕事を頂戴して命をつないで行かなけれ
ば生きていく術はないのである。それは独立自営とは名ばかりで大企業というタイタニックに
必死でぶらさがっている丸裸の哀れな乗船客に過ぎない。不況風が強く吹けば真っ先に凍え
る海に突き落とされる運命にあるのだ。しかし資金が凍結され、優秀な人材を持たない大多数
の中小自営業者がこの境涯から抜け出すことはどう見ても不可能である。大企業のピンはね
と国(税務署)の収奪によって二重に搾取される中小自営は、大企業と国がピンチに立たされる
と、さっさと処分されて殺されてしまうのである。中小自営業者はまさに虫けら同然なのである。