1999/03/10 実力行使の条件 前ページに戻る
日々の組手やスパーリングで攻防の練習を繰り返しているため、人を
突いたり蹴ったりすることが当たりまえかつ自然なこととして馴化されて
しまっているからである。そのため理性を失うような場面に遭遇すると
つい興奮して本能的に他人を殴ったり蹴ったりする無自覚の暴行に
及んでしまうのである。
一般に正義感が強く真面目な男(ひと)がこの陥穽に陥りやすい。女性など
同伴の折り、妙なイチャモンをつけられて男としての尊厳を傷つけられるような
場面ではとくに用心しなければならない。ついうっかり手を出して正義のつもりの
実力行使が警察扱いで暴力と判定され暴行犯として処罰される悲劇に遭うのである。
この辺の法律的事情に詳しい悪党はわざと暴力を振るわざるを得ない状況に
相手を追い込み、相手に実力行使をさせるようなお膳立てを用意周到に整える。
そして最小限の被害にあうと、それをもって警察を味方につけて示談と言う切り札
で慰謝料という名目の法外な金銭をせびるのである。それが計画的な詐欺的犯罪
であっても現行法では暴行罪や傷害罪はそれを上回る重罪として取り扱われるため
無念の涙をのむ結果となるのである。
このような馬鹿な目に会わないために次のような実力行使の条件を日頃から胆に
銘じておく必要がある。
・ 先ず攻撃型の格闘家は自分は熱しやすく攻撃的な人間であることを自覚しよう。
・ 次に何か他人と揉め事が起こった場合はけっして自分からは手は出さないこと。
そして自分から手を出さない代わりに口を出そう。つまりあくまで冷静に正当な論法で
相手と口論しよう。そしてとことん口論することに全エネルギーと攻撃力を集中しよう。
・ その結果としてラッキーにも相手が先に手を出してきたら「正当防衛」を大声で宣言し、
回りの人間に確実にアピールすること。そして明確な反撃の印として相手を威嚇する
ための大きな気合をここで発すべし。これで相手がひるんだら終りにしよう。
・ さらに相手が手を出してきた場合は全力で反撃する。そして大切なのは相手が倒れ
たら過剰防衛にならないよう即座に攻撃を止めることである。
以上が実力行使の条件だが、ここで一番大切なのは冷静に口論することである。
冷静に口論することは組手やスパーリングと同じである。無闇に感情に流されず
冷静沈着に口論することは組手やスパーリングに勝るとも劣らない勇気と胆力が
必要となるのである。武道家には口論はもっての外などと気取っていないで武道家
こそ闘わずして勝つ口論の奥義を極めるべきなのである。